最後の授業 ~「修士学位記授与式」に出席して~ 

 

2023年4月15日 (2021年度入学) 村田  耕次

 

2年間の商学研究科博士前期課程での学生生活を終え、修士論文も無事合格し、3月26日に晴れて「修士学位記授与式」を迎えることができた。「修士学位記授与式」は明治大学駿河台キャンパスのグローバルフロントで行われ、久々にスーツを着用しネクタイを締めて出席した。

 

一つの区切りとして何気なく式に出席したのだが、オンラインで参加した先生方一人一人から祝辞を頂くなかで、先生方が自らの言葉で熱い思いを語りかけて下さる姿に感激した。学問に対する真摯な考え方に接し、まさに「最後の授業」を開いて頂いたという予想以上の感動を受けた。  


商学研究科長の高橋先生はじめ8つの専攻系列にわたる先生方、合計10人の先生から祝辞を頂いたが、それらはそれぞれ学問と研究に触れるものだった。思い出すままにキーワードを列記すれば、 

・不断の努力と研究の継続

・自分のブランド価値

・批判的精神 

・学問の追求

・健康第一で学問を継続

・自ら解くべき問題の設定

・人を繋げるコミュニケーション

・自分の頭で考える

・理想を掲げる(理想は高ければ高いほど良い)

・論理的にものごとを考える一方で、論理では説明できないことも知る

などであった。

 

大学教育については、就職後必要となる「技能の習得」に寄与するものに変えるべき、という意見がある。一部の大学では「実学」という名のもとにビジネスキャリアを活かした「実務家教員」を求めたりもしている。そのような考え方にも一理はあるが、大学教育の基本的位置付けは、やはり、学術研究の基礎教育にあると思われる。私は、わずか2年間であったが大学院での学びのなかで、修士論文を作成する過程を通じて、「学問」や「研究」のにおいだけでも嗅ぐことができたように思う。

 

問題意識を持ち、問いを立てることが、学びの起点であることを学んだ。その上で、自分なりの仮説を立て、エビデンスをもって実証し、そして結論付け理論化する。問題意識を醸成し、客観的に検証可能な問いを立てるには、幅広い不断の勉強と思考が必要である。このような気づきは、簡単で当り前のようにみえるかもしれないが、これだけのことを学び、気づくのに2年かかったともいえる。しかし、このことを学んだだけでも大きな収穫だった。私にとっては、大学院で学んだ最大の価値といっても良い。

 

私のような、長年の職業経験を積んだシニア学生は、学問と実業の違いがよく分かっていない場合がある。実務経験から得たノウハウをそれだけで学問として考えてしまう傾向がある。ビジネスの現場実務と商学の学問研究は、対象とする分野は重なるかもしれないが、それぞれの手法や目的は根本的に異なることを知った。商学は、理論を中心に研究する学問であり、シニア学生が持つ実務的な問題意識を学問的な研究課題として学術論文に昇華させる必要がある。「学問とは何か」は、「論文とは何か」に通じ、「学問をいかに学ぶか」は、「論文をいかに作成するか」に集約されるだろう。修士論文が2年間の学びの集大成であり、修了基準であることも頷ける。

そのような2年間の学問研究に思いをはせ、「学位記授与式」の10人の先生方の一言一言を拝聴すると、明治大学大学院商学研究科の学問に対する真摯な考え方に心打たれ感銘を覚えるのだった。僭越ではあるが、商学研究科は商学を学問として教育し研究する場所であると改めて認識し、そのような場で自分が学ぶ機会を得て無事修了できたことに感謝した。 

 

この日をもって私は明治大学のOBとなったが、OBとして母校の学問に対するそのような真摯な姿勢を誇らしく思う。大学教育において「実学」を謳う大学が増えているが、我が母校には学術研究の基礎教育としての大学教育を堅持し、商学研究科は商学という「学問」の教育と研究の場であり続けて欲しいと思った。そのために、私も一人のOBとして協力できることがあればできる限り協力していきたいと思った。


 「学位記授与式」では、自らの学びを振り返り、先生方からは改めて「学問への姿勢」を教えて頂いた。とても有意義な場だった。このような学問研究の場で2年間教えて頂いたことに感謝すると共に、今後も引き続き自分なりに「学び」を続けていきたいと思う。

                                              以上     

最後の授業

                              2023--4-15
                                 (2021入学) 村田  耕次

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